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サトルカゲユウ 幕間の三『魔王』

 魔王の居城から遠く離れた異国の地に、『災い』という言葉がある。
 災いの『ワザ』とは、『鬼神の為す業』のこと。疫病や天変地異など、人の力ではどうすることもできない災難をいう。
 業魔女王メビスの存在は、まさにそうした災害そのものであった。
 災いを為す害悪。人にとっても魔族にとっても、彼女の存在は害でしかない。女王として君臨してこられたのは、ただ圧倒的に強かったから。暴力を振るうことに秀でていたためである。

 魔王とは何者か。
 その答えを知るには、三百五十年前まで歴史をさかのぼらなければならない。

 始まりは一人の人間だった。
 赤い血が流れるただの人間。彼は超能力者だった。
 人に生まれ、人ならざる異能を手にした人間。突然変異。

 彼が手にした異能とは、奇しくもココロが編み出した『心当て』の技と同じ。精神操作の能力だった。
 進化論に興味を持っていた彼は、その異能でもって人類という種を人為的に進化させようと試みる。人体実験である。
 彼の非人道極まりない実験によって、もはや人とは呼べない数々の怪異が生み出された。その中には、ココロとマドゥが倒したムカデ型怪人のような怪物も存在した。

 人はどこまで進化できるのか。答えを求め、彼は人体実験を繰り返した。結果誕生した存在こそ、業魔女王メビスを筆頭とする亜種族だった。
 青き血が体内を流れる人々。
 ――魔族。
 不老の肉体と、妖術に似た異能を持つ究極生物。
 皮肉にも彼の人生は、自らが生み出した究極生物に殺害されることで幕を閉じる。

 超能力者の彼が死去したその時点で、地上には三人の魔人が存在していた。
 一人は繁殖能力を強化された雌雄同体の魔人。彼――ないし彼女は、性転換を繰り返し多くの魔人を産んだ。
 一人は知能を強化された魔人。彼は奇跡の実現を可能とする様々な道具を作り出した。
 死者蘇生を可能とする旭光の杖。存在封印兵器アルカディア。輝く聖剣ラルタガナンなどは、この魔人が作り上げた代物である。
 残る一人は数多くの異能を持つ女性型の魔人。心を読み、未来の危機を読み、無敵の肉体を誇る戦闘種。
 心を読む最強の魔人。彼女は人一倍心の優しい娘だった。どこにも行き場のない魔族たちを励まし、話し相手となり、ときに手料理を振舞った。
 多くの魔族たちにとって、彼女の存在は心の拠り所だった。

 あるとき、魔族の娘は一人の人間に恋をする。その男は聡明な若者で、国の未来を誰よりも憂えていた。
 当時帝国の支配領地であったその地域は、圧政により死者が続出する惨状であった。
 そんな現状を男はどうにか打破したいと考え、その誇り高い姿に魔族の娘は胸を打たれた。魔族の総力を挙げて男に協力するよう、同胞たちに訴えた。
 魔族という協力者に後押しされ、男はその地域に新たな国を作り上げる。初代国王となったその男は、支えてくれた魔族の娘を娶った
 こうして、魔族の娘は王妃となり、行き場をなくしていた魔族たちは安住の地を得ることとなった。

 初代国王は魔族の王妃を確かに愛していた。
 心読みの力を持つ彼女は、その愛が真実であることを見抜き、この上ない幸福を感じていた。
 しかし彼女は失念していた。人間は心変わりする生き物だということを。
 あるとき人間の王は、魔族の研究所から存在封印兵器アルカディアを盗み出し、魔族を地上から消し去るために使用した。

 魔族の王妃が罪を犯したわけではない。彼女は王に惜しみない愛情を注いだ。誠意を尽くした。全てを捧げた。
 そんな魔族の王妃に対し、人間の王は言った。「眠れ。アルカディアの地へ」と。
 王は恐れたのだ。人ならざる力を持つ魔の一族を。
 いつかその力が巨大な矛となって人間に向かうのではないかと、そう危ぶんだ。

 異界に投げ出された魔族の王妃が見たものは、作物が育たない不毛の地と、周囲を埋め尽くす正体不明の化け物たち。
 盟友であった原初の魔人二人は瞬く間に殺害され、魔族の王妃は残る同胞を守るべく化け物たちと戦った。
 ――戦って。
 ――戦って。
 ――また戦う。それまでの平穏が幻であったかのように。

 一年が過ぎ、痛みを忘れた。
 十年が過ぎ、憎しみを忘れた。
 百年が過ぎ、悲しみを忘れた。
 同胞の最期を見続け、化け物の血と肉を喰らい、いつ来るとも知れない自分自身の死に怯える日々。
 終わらない地獄の中で、王妃は戦い続けた。未来への希望にすがることもできず。
 三百年――。絶望すら忘れ、残ったものは狂気。三百年の悪夢を経て、心優しき王妃は狂った獣へと変貌を遂げた。

 地上のことも忘れかけ、怪物との闘争に明け暮れる毎日。その過酷な生存競争は、魔族が全滅するまで続くと思われた。
 だが、あるとき転機が訪れる。たった一人地上に残っていた魔族の生き残りが、存在解放能力アトランティスを発動したからだった。
 他の魔人たちとは違い、魔族の王妃は地上に子供を残していた。
 魔族を陥れた国王との間に生まれた子供。人間と魔人のハーフ。『魔族』という括りから外れたその子供だけが、唯一アルカディアの効力から逃れることができた。

 再び太陽の下に戻ってくることのできた魔族たち。
 魔族の王妃は人間たちへの復讐を考え、すぐに行動を起こした。あるだけの戦力をかき集め、周辺各国に手当たり次第戦いを挑んだ。
 そのときに到って、王妃はようやく気づいた。
 かつて自らが遺した予言書――。そこに記した『魔王』なる存在の正体が、他ならぬ自分自身であったことに。

 彼女の名はメビス。業魔女王メビスその人である。



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