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~ロランベル・アルジェント~

 一目見て、手遅れだとわかった。力なく座り込んだディノの姿と、彼の口からもれる赤黒い血。誰が見ても致命傷だとわかるくらい凄惨な有様だった。
「ディノ! ――ディノ! しっかりしてディノ!」
 無駄だとわかっていながらも、彼の名を叫ばずにはいられなかった。叫びながら妙な既視感を覚えて、僕は声を止めた。
 ――知っている。この光景を見たことがある。
 僕は何度か立ち会っている。ディノの死をこの目で見届けている。
 瞬間、全ての謎が氷解した。
 どうして僕が未来の記憶を持っていたのか。どうしてディノを心の底から信頼しきっていたのか。どうしてディノに負い目を感じていたのか。
 答えは一つ。僕が何度も過去をやり直してきたからだ。
 僕が持っていた未来の記憶。あれは予知能力なんかじゃなかった。この身で体験してきた本当の出来事だったんだ。
 全ては異形成腫活化病がもたらした運命の悪戯。
 僕が見放された者になると、体内で時間の流れが異常化してしまい、記憶を維持したまま過去へと立ち戻る
 僕はそれを何回も、何十回も、何百回も繰り返してきた。死を招く歌声がずっと聞こえていたのも、その後遺症だろう。
 無限に積み重なってゆく思い出はやがて脳の限界を超え、僕の記憶は潰れたプディングのようになってしまった。混ざり溶け合い原型もわからない。無残な思い出の欠片だけが、僕の中にある。


 時のループを何度も経験しているうち、僕はあることに気づいた。
 一つ。僕が過去へ戻されて3年が経つと、あの『アルデバラン』が現れ破壊の限りを尽くすこと。
 そしてもう一つ。僕が過去へ戻されると、アムルパーレのどこかに実在しないはずの人物が現れること。
 この謎の人物は帝都の未来に深く関わっているようで、放置していると『アルデバラン』になってアムルパーレを滅ぼしてしまう。どこに現れるかわからず、時がループするたび名前を変え、誰も話題にしようとしないため、見つけ出すのはとても難しい。
 何十回とループを経験している僕も、まだ両手の指で数えられるくらいしかその存在を確認できていない。
 でも今回は、比較的早い段階でその名を知ることができた。
 ――大皇帝リュシアン。存在しないはずの皇帝。
 彼のいる場所が未来の分岐点だ。だから僕は、彼がいるという石造りの古城へ向かっていた。でも、僕が辿り着くより前にアイツが現れてしまった……。


 怪異が石畳を吹き砕き、その振動で天井が崩れた。無数の瓦礫が降り注ぎ、僕の体を容赦なく押し潰す。
 もうじき僕の命も尽きるだろう。だけど、ディノの後を追うことはできない。そのとき僕は過去へと戻されてしまうだろうから。
 過去に戻っても、今の記憶は残るだろうか。……またディノの名前を忘れてしまうんだろうか。
 せめて、ディノを大切に想うこの気持ちだけでも残したい。――そう願いながら、僕は暗闇に身をゆだねた。


 A:諦める
 B:諦めない!


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